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ステーブルコインと資金決済法~日本でステーンブルコインを発行する場合の懸念点~

作成者: 東京トークン編集部|2022/05/16

ステーブルコインについて、法律上の定義は存在してませんが、金融安定理事会の報告書では、「他の資産または資産のバスケットに対して安定した価値を維持するように設計された暗号資産」と定義されています。2021年1月時点で日本の暗号資産取引所にて取り扱いが行われている日本円に連動するステーブルコインは存在しません(社会実験として取り扱いが行われていたものや、ユニスワップなどの分散型取引所(DEX)で取り扱いが行われている日本円に連動するように設計されたステーブルコインは存在します)。

世界に目を向けると、USドルに連動するように設計されたステーブルコインは存在しており、これらは、大手の暗号資産取引所であるBinanceをはじめ、複数の取引所で取り扱いが行われています。

ステーブルコインが価格を維持する3つの仕組み

それでは、ステーブルコインとはどのような仕組みで安定した価格が維持できるようになっているのでしょうか?

価格の安定のさせ方には大きく分けて3つの方法があるとされています。

1:「法定通貨担保型」と言われる方法

文字通り、法定通貨を担保として、法定通貨との交換比率を固定化することで価格の安定化を目指すという方法です。例えば、Tether(USDT)やUSD Coin(USDC)がこの法定通貨担保型に該当します。

2:「暗号資産担保型」と言われる方法

法定通貨ではなく暗号資産を担保資産として価格の安定化を目指す方法です。この方法は価格が不安定な暗号資産を担保とすることから、通常、担保資産とする暗号資産の価格変動性を考慮して担保資産を保有する必要があるといわれています。例えば、MakerDAOが発行しているDai(DAI)が暗号資産担保型に該当します。

3:「無担保型」と言われる方法

アルゴリズム型ともいわれることがあり、コインの供給量を調整することで、価格の安定化を目指す方法です。例えば、価格が高騰している際には、コインを追加発行することで、価格を引き下げ、反対に、価格が暴落している場合には、コインを市場から購入し、供給量を減らすことで価格を引き上げるという具合です。例えば、Basis Cashが無担保型(アルゴリズム型)に該当します。

先に述べた通り、2021年1月時点で日本の暗号資産取引所にて取扱いが行われている日本円に連動するステーブルコインは存在しません。一方で、日本円に連動するように設計されたステーブルコインのプロジェクトが全くないわけではありません。日本にも地域通貨に近いプロジェクトも含めると、複数のステーブルコインのプロジェクトが存在しています。

ステーブルコインの定義

ここで、ステーブルコインについて考える際に、資金決済法第2条5項に定められている暗号資産の定義を理解することが重要になります。資金決済法上、暗号資産の定義は下記のように定められている。

“この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの”

日本銀行はホームページで、上記の定義を3つの性質に分けて解釈しています。

  1. 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
  2. 電子的に記録され、移転できる
  3. 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

上記、日本銀行のホームページ上で確認できる暗号資産の性質の3がステーブルコインを検討する際にとても重要な性質となります。この性質から、法定通貨担保型のステーブルコインは、日本の法律上は暗号資産に該当しないという判断が可能です。

では、法定通貨担保型のステーブルコインは、日本の法律上はどのような取り扱いになるのでしょうか? これは、ステーブルコインの仕様により法的な位置づけも変わってきます。

例えば、発行者が金銭による払い戻しを行う性質のステーブルコインを発行した場合は、銀行法及び、資金決済法でいう「為替取引」に該当する可能性があり、銀行業免許や資金移動業者として登録を受ける必要が発生します。

また、対価を得て発行される電子マネーのような性質にする場合は、法的には「前払式支払手段」に該当する可能性があります。この「前払式支払手段」に該当する場合は、原則として払戻しが認められないという性質があります。

日本におけるステーブルコインの現状

以上、現状から鑑みると、日本において法定通貨担保型のステーブルコインを発行した場合、法律上は暗号資産の定義は満たしていないため、当局からは「暗号資産には該当しない」と判断される可能性が高いと思われます。ステーブルコインの性質に照らし、当該ステーブルコインでの取引が「為替取引」に該当するのであれば、銀行業の免許や資金移動業の登録が必要になるでしょうし、「前払式支払手段」に該当するのであれば、一定の要件を満たす場合には財務局への届出が必要でしょう。

またその価値の安定のさせ方が、法定通貨担保型の場合には、日本の資金決済法上は暗号資産に該当しないと判断される可能性があります。暗号資産担保型、あるいは、無担保型(アルゴリズム型)の場合には、価格を安定させることが難しいという課題もあります。日本でステーブルコインを発行する場合の最適な方法は、現在進行中のプロジェクトの状況や実情に合わせた法的整備の進捗等を注視して検討していくことが重要であると考えられます。

※参考文献

  • 財務省HP

https://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g7/cy2019/g7_20190719.htm

  • 日本銀行HP

https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/money/c27.htm/●Q&A実務家のための暗号資産入門-法務・会計・税務- 川井 健