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コラム

NFTの可能性について

2022年5月5日イギリス・ロンドンでの演説で岸田内閣はWeb3.0を国家戦略として推進していくと表明しました。Web3.0における重要なひとつのキーワードとして「NFT(Non-fungible token)」があります。NFTの市場規模は2021年に176億ドル(約2兆円)を記録し、前年比約200倍にもなりました。今後もますます発展していくと予想されるNFT市場ですが、はたしてNFTとは一体どういう技術でどのように使われるのでしょうか。以下で解説していきます。

NFTとは=非代替性トークン

NFTとはNon-fungible tokenの略で、非代替性トークンと呼ばれています。ブロックチェーン技術は誰でもコントラクトアドレスを作成すればトークンを発行する事ができますが、トークンには代替性トークン(FT)と非代替性トークン(NFT)があります。トークンにはそれぞれ発行されているブロックチェーンがあり、チェーンによっていろいろな特徴があります。

代替性トークンは一般的に知られている仮想通貨で、全てのトークンが同じ価値を有します。我々が所有している100円玉は全ての100円玉が同じ価値を持ち互換性があり、支払い手段や価値の保存手段などに使われます。仮想通貨もこれと同じで1ENJコインは1ENJコインと同じ価値を持ち、これを代替性トークンと呼びます。

代替性トークンが通貨のような価値を持つ一方で、非代替性トークンはそれぞれのトークンに互換性がありません。非代替性トークンは全てのトークンに識別子があり、ブロックチェーン上ではそれぞれが固有のものとして認識されます。支払手段や価値の保存といった通貨としての利用には適さないですが、アートや音楽といった唯一無二の物を示す手段として利用されています。

現在NFTを利用したプロジェクトは多数存在します。各チェーンの有名なNFTプロジェクトを抜粋しました。

NFTの情報はブロックチェーン上に記載され誰でも閲覧が可能で改ざんされません。その為、誰がいつ発行したのかを検証することができるNFTとしてデータを残すことで、そのデータは唯一無二のものとなり希少性を持ちます。これまでデジタルデータは自由にコピーができ、供給量が無限にあったため価値をつけることができませんでしたが、NFTの誕生によって供給量を制限することができ、価値をつけることが可能になりました。

またNFTが2次流通する際には製作者にロイヤリティが入る仕組みを作ることが可能です。仲介業者が存在しないブロックチェーンで実現したこの仕組みは、仲介業者による不当な手数料を削減し、クリエイターの利益を守る事ができます。

NFTのユースケースについて

新たなアートスタイル

現在NFTが最も使われているケースが「アート」です。本来コピーが可能なデジタルアートをNFTにすることによって唯一性が生まれ、価値がつくようになります。実際、2021年に世界最大のオークションハウス「クリスティーズ」のオンラインオークションで出品された「Everydays: the First 5000 Days」というBeeple氏の作品は38,525ETH(約75億円)で落札されました。世界最大のオークションハウスで世界最高額でNFTが落札されたことは大きな話題を呼び、NFTバブルの火付け役となりました。


https://onlineonly.christies.com/s/beeple-first-5000-days/beeple-b-1981-1/112924

遊んで稼ぐことができる

ゲームの分野ではNFTを取り入れた、NFTゲーム、ブロックチェーンゲーム、GameFiというワードが昨年から散見されるようになります。従来の一過性であったゲームへの資金投入が、ゲーム内のアイテムをNFTとして扱う(資産として扱う)ことができるようになり、新たなゲームスタイルを生み出しています。

NFTゲームの元祖である「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」はNFTゲームブームの火付け役です。このゲームはさまざまな特徴をもった猫をNFT化し、猫同士を交配することで新たな猫をNFTとして作り出すコレクションゲームです。猫がNFTである事によってゲーム内アイテムに流動性が生まれ、レアリティの高い猫は高額で売買されています。これがNFTがゲームにもたらす変化です。CryptoKittiesを始めとしたNFTゲームブームでは、ゲームだけで月に数百万稼ぐプレイヤーや、発展途上国ではゲームで生計を立てる人が出始めるなど、大きな話題を呼びました。



https://www.cryptokitties.co/

NFTが仮想空間の架け橋に

メタバースはまだはっきりと定義されておらず、例えば、Microsoftが買収したマインクラフトはメタバースと言われていますが、その特徴としてマインクラフトではさまざまなユーザーが独自の仮想空間を作り、互いに行き来することが可能です。これまで仮想空間(オンラインゲーム等)で得たものは他の仮想空間との互換性はありませんでした。

しかし相互運用性がなかった仮想空間におけるアイテムをNFT化することによって、仮想空間同士に相互運用性が生まれます。アイテムをNFT化すると、NFTを売却して他の仮想空間のNFTを購入したり、仮想空間ごとにアイテムをNFTに紐づけると、単一のNFTがさまざまな仮想空間で使えるようになる未来がやってくるかもしれません。

例えば、The Sandboxは仮想空間上の土地をNFTとして販売し、その土地を貸し出したり、発生した収益の一部をNFTの所有者は受け取れるといった、現実の不動産のようなユースケースがあります。既存のゲームでも、マインクラフトのワールドをNFTにして販売するといったケースも今後出てくる可能性があります。

メタバースはまだまだ未発展の分野ですが、実現すると私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。

会員権ユースケースの普及

さらに最近の例を見てみてみると、NFTを持っている人は保有者限定のコミュニティに参加できたり、保有者限定のツールを使用できたりなど、会員権のような役割を果たしているNFTも存在します。「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」はそのひとつです。BAYCは「Yuga Labs」社によって作成されました。BAYC保有者しか入れないDiscordサーバーが存在し、BAYCホルダーにはマドンナやジャスティン・ビーバーなどの多くの著名人が参加しており、ホルダーにはプロジェクトの早期アクセス権が得られたり、新しいNFTが貰えたり等のさまざまな特典があります。最近の例では、2022年3月18日にNFT保有者に対してAPEというガバナンストークンが配布されました。約1.5億枚が配布され、執筆時点での時価は約1,345億円です。

APEコインはAPEエコシステム内のガバナンス及びユーティリティトークンで、BAYCは今後行うプロジェクトで主要トークンとしてAPEコインを利用していくと表明しており、実際にBAYCのメタバースプロジェクトである「Otherside」ではランドセールがAPEコインで行われました。また所有者は枚数に応じてガバナンスの投票権を持つ事ができます。BAYC+MAYC保有者に全体供給量の62%が配布され、BAYCを立ち上げた「Yuga Labs」は僅か16%しか保有していません。その為APEホルダーはコミュニティの方向性をホルダーが決める事ができるようになります。コミュニティが盛り上がるといずれBAYCというブランドが確立され、コミュニティ内でのBAYC保有によるメリットや、NFT、トークンの価値も上がるため、ホルダーはコミュニティを盛り上げようと積極的に運営に参加したり、自らプロジェクトを計画したりと、組織は自律的に運営されます。これが従来の組織スタイルとは大きく違う点で、「DAO=Decentralized Autonomous Organization」自律分散型組織と呼ばれています。

今後NFTを利用し参加者全員でコミュニティを運営する新たな組織スタイル「DAO」が一般的になる日がくるでしょう。


https://opensea.io/assets/ethereum/0xbc4ca0eda7647a8ab7c2061c2e118a18a936f13d/4890

NFTの市場規模について

CoinMarketCapで確認できるNFT全体の時価総額は執筆時点で約1.3兆円になります。Technavioが出す市場分析によると2021年に約5.2兆円だった市場規模は年平均35%で成長し、2026年には25.1兆円に達する見込みです。
https://www.prnewswire.com/news-releases/non-fungible-token-nft-market-size-to-grow-by-usd-147-24----technavio-301529125.html 

チェーン別NFT取引高

THE BLOCKのCryptoSlamを参照したグラフによると、NFT市場におけるEthereumのシェアは全体の8〜9割と依然として強く、今後Ethereumのアップデートである「The Merge」によりガス代などのスケーラビリティ問題が解決すれば、今後もEthereum一強の時代が続くと思われます。

THE BLOCK from CryptoSlam



https://www.theblockcrypto.com/data/nft-non-fungible-tokens/nft-overview/nft-trade-volume-by-chain

SolanaチェーンはNFT市場で2番目に勢いのあるチェーンで、Ethereumが抱える問題である、取引速度の遅延や手数料の高騰などを改善し、Ethereumのシェアを奪い取ろうとしています。このようなチェーンはEthereum Killers(イーサリアムキラー)と呼ばれます。BNBは非常に優秀なチェーンですが、NFT市場におけるシェアは獲得できていないのが現状です。

チェーン別の特徴

Ethereumがここまでのシェアを獲得しているのにはさまざまな要因がありますが、他のチェーンと決定的に違うところはセキュリティの高さでしょう。セキュリティの高さはノード数とアルゴリズムである程度決まります。PoWだとノード数が増えやすく、ノード数が多いとより分散化され堅牢性が高くなります。

主要マーケットプレイス

作成したNFTを売買するための場所がマーケットプレイスです。昔から現在までシェアの大部分を占めているのがOpenSeaです。2022年まではOpenSeaが全体の9割を占めていましたが、2022年からLooksRareというマーケットプレイスがシェアを広げてきています。

https://www.theblockcrypto.com/data/nft-non-fungible-tokens/marketplaces

2大主要マーケットプレイスの共通点はEthereumに対応している点、誰でも上場ができる点です。シェアの大きいEthereumに対応しているのはいわずもがなですが、これら2大プラットフォームは誰でも簡単にNFTを売買できます。そのためNFTで資金調達をする事が容易になり、多くのプロジェクトがOpenSeaに集まります。

NFTのこれから

ここまでNFTについて解説してきましたが、NFTが新しいデジタルアセットであることは伝わったかと思います。NFTはブロックチェーンの核心となる技術で、今後Web3.0ムーブメントではNFTを肝としたサービスが多く誕生すると思われます。

しかし現状我々の日常でWeb3.0的なサービスを懐疑的に思う一般層が多くいるのも事実です。今後はWeb2.0であるTwitterやInstagramといったSNSをはじめ、多くの中央集権型プラットフォームがNFTを積極採用する流れが起き、NFTや暗号資産技術が徐々に一般の理解を獲得していくでしょう。そして画期的な分散型Webサービスが我々の生活に浸透するようになると思われます。

NFT業界は変化が激しく、1ヶ月でさまざまなプロジェクトが生まれます。まずはOpenSeaなどで実際にNFTを見て、買ってみて、コミュニティに参加してみたりするとNFTへの理解を深めるきっかけになるかもしれません。


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