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コラム

代替通貨が経済圏を構成する「トークンエコノミー」

世界中で経済圏の在り方が大きく変わりつつあります。

近年、独自の経済圏であるトークンエコノミーが注目を集めています。トークンエコノミーは既に多くの企業や自治体、大学等が開発を進めており、従来の法定通貨による経済社会に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。本記事では、トークンエコノミーの概要や事例を紹介していきます。

トークンエコノミーとは?

トークンエコノミーとは、「トークン(代替通貨)を利用したエコノミー(経済圏)」のことをいいます。

我々は 政府が発行する法定通貨(円/ドル等)を使って経済を動かしています。しかし、必ずしも法定通貨でサービスを受けたり提供するだけではなく、時には商店街で商品券を使って買い物をしたり、ラーメン屋で貯めたポイントを使って無料トッピングをしたり、オンラインゲームでユーザー同士が共通の暗号資産を使ってアイテムを売買する等、代替通貨を利用します。この「通貨に代わるもの」が「トークン」です。

一つのトークンが流通し多くの人々に使われることで、一つの独自の経済圏が誕生します。これをトークンエコノミーといいます。

これまでも上記のように、トークンエコノミーが存在していましたが、何故、近年になって「トークンエコノミー」が注目されているのでしょうか。

その答えが「ブロックチェーン技術」の登場です。

トークンエコノミーを支えるブロックチェーン技術

代替通貨に最も必要なものは、「信用」です。

19~20世紀のはじめにかけて世界各国で、金(ゴールド)をお金の価値の基準とする制度「金本位制」が取り入れられました。しかし金本位制は次第に崩れ、代わって登場したのが各国の中央銀行が紙幣の量を管理する制度「管理通貨制度」です。

金本位制では金の保有量によって発行する貨幣が制限されますが、現在の管理通貨制度では「国の信用」によってお金の価値が決まります。

為替が変動することも国の経済への信用の有無が一因となっています。

つまり、代替通貨にも「信用」を持たせることが非常に重要であり、その役割を担うのが「ブロックチェーン技術」です。

ブロックチェーンは別名「分散型台帳」といい、 従来型の情報一元管理(中央集権型)ではなく、個々のシステム内に同一の台帳情報(データベース)を共有するシステム(分散型)であるため、取引データ(トランザクション)を改ざんしたり消すことは非常に困難な仕組みとなっています。ブロックチェーンは高い透明性や信頼性を確保できることから、多様な用途への応用が期待されています。

このブロックチェーン技術が代替通貨に信用をもたらしました。

それでは何故、法定通貨ではなくトークンを使う必要があるのでしょうか?

トークンを使うメリット

トークンを使う主なメリットとして①早くて安いトランザクション②契約や決済管理の自動化③銀行に頼らない資金調達④コミュニティ形成が挙げられます。順に解説していきます。

早くて安いトランザクション

トークンの取引には基本的に仲介者が存在しません。従来の送金作業は銀行等の金融機関を介して行っているので手数料や時間が取られ、それ故に数円~数百円の送金は憚られます。しかし、トークンの取引は送り主が受取人に直接送ることができるため、銀行送金に比べ、仲介手数料も時間も抑えられ、少額のトークンでも気軽に送ることができます。

契約や決済管理の自動化

トークンエコノミーでのトランザクションにスマートコントラクトを活用することによって、管理者や仲介者を介さずに契約や決済を自動的に完了することができます。

スマートコントラクトでは、ブロックチェーン上に記録された実効性のある取引・契約について、特定の条件が満たされた場合に、予め決められた仕組みを利用することで、双方間の合意を契約書という書面で残す必要がない仕組みとなっています。

銀行に頼らない資金調達

実績のない個人や小さな企業が、株式を発行したり銀行等の金融機関を通じて資金調達することは非常に難易度が高いです。しかし、株式や融資による資金調達の代わりにトークンを発行し、投資家に販売して行われる第三の資金調達方法の出現により、新たなエコノミクスとして銀行に頼らない経済圏の創出を可能にしました。

コミュニティ形成

トークンを使うことの最大のメリットは「コミュニティ形成」です。

何故、法定通貨ではなくトークンを使う必要があるのか? もちろん、 法定通貨(円)であれば、日本のどこに行っても使うことができますが、一方で自社若しくはその地域だけで使って貰いたいお金、としたい場合には、不適当な場合があります。トークンの場合は使用先が限定されるため、あるコミュニティを独自の経済圏で囲うことができます。

では何故、既存のトークン(ビットコイン、イーサリアム等)ではなく、新たにトークンを発行するのか? コミュニティ内にいる人々限定の共通通貨(新たな独自トークン)をつくることで、そのコミュニティの経済が活発に動くだけではなく、トークンに「プロダクトの所有権・サービスの使用権・あるコミュニティへのアクセス権・サービスやコミュニティの重要な意思決定をする際の投票権」等の何らかの有用性を持たせることで、消費者がそのコミュニティにいることに価値が生まれます。このようなトークンを「ユーティリティトークン」といいます。

上記ユーティリティトークンのように、トークンには各々の使用方法に基づいて特有の機能を持たせることができ、種類はさまざまです。また、一つトークンが複数のカテゴリーに属していることもあります。

主要なトークンの種類の一つとして「ガバナンストークン」が挙げられます。ガバナンストークンとは、そのプラットフォーム内での決め事への投票権を付加されたトークンです。ガバナンストークンの保有者は、コミュニティの一員として今後の運営方針の議決に参加することができます。

近年、スポーツ業界において「ファントークン」がトレンドとなっています。ファントークンは、あるスポーツチームが発行するトークンのことで、ファントークンの保有者は限定特典やチーム運営の意思決定への投票権を得ることができます。つまりファントークンは、ユーティリティトークンとガバナンストークンの機能を持ち合わせています。

トークンエコノミーの導入事例

まずは、これまで評価されづらかった価値あるコンテンツへの「正当な報酬」としてトークンを上手く活用しながら、地方創生事業を行っているトークンエコノミーの事例を紹介します。

トークンエコノミー × 地方創生事業「さるぼぼコイン」

「さるぼぼコイン」は、岐阜県高山市・飛騨市・白川村の地域仮想通貨で、お金の地産地消を促進し、地域経済を活性化する目的で開始しました。

さるぼぼコインは居酒屋や喫茶店・日々のお買い物まで、飛騨地域の約1,700店舗の加盟店で支払いすることができ、ユーザー間での送金も可能となっています。さらに、飛騨地域の一部の寺院ではQRコードの読み取りで、さるぼぼコインを使って賽銭が出せるようになっています。

また、さるぼぼコインでしか購入できない裏メニューが掲載されているWebサイト「さるぼぼコインタウン」( https://www.hidashin.co.jp/coin/town/index.html )が2020年12月に公開されました。

さるぼぼコインタウンの裏メニューには、「市場に出回らないお酒、飛騨牛」「イタリア料理屋のカツ丼」といった「食」のメニューのほかに、「飛騨高山の山」や「夫婦の歌」「〇〇さんの秘密話」、「屋根裏の私設図書館 独り占めの時間」等、一風変わった商品が売られています。

そこには、地域最大の魅力である「飛騨の市民」を商品として売り出すことで、売る人/買う人の間に、新しいコミュニケーションを生みたいという想いや、さるぼぼコインでしか買えないもの・体験を飛騨の観光になるようなものにしたいという想いが込められています。

 

続いて、人々の日常生活の行動にトークンエコノミーを導入した事例を紹介します。

トークンエコノミー × ライフフィットネスアプリ「STEPN」

STEPNは、運動することでお金を稼ぐことができるライフフィットネスアプリです。「Move to Earn(運動して稼ぐ)」という概念で注目を集めています。

STEPNの大まかな概要は、ユーザーがアプリ上でNFTのスニーカーを購入し、GPSと連動して現実世界で移動することによってトークンを稼ぐことができるゲーム感覚アプリです。

STEPNの注目ポイントは、独自発行のトークンをゲーム内で消費させ、トークンの価値を落とさないようにする設計です。運動して稼いだトークンはUSDCやSOL等と交換できるため、市場を通じて現金に換金することも可能ですが、ゲーム内で稼いだトークンを以下の用途として使用することができます。

・スニーカーのレベルアップ・修理

・新しいスニーカーのミント(配合)

・ジェムソケットのロック解除・アップグレード

・ミステリーボックス(宝箱)の開封

 

https://stepn.com/litePaper

STEPNのシステムは、「動く」という実際の日常生活にトークンエコノミーを導入するといったベースの設定が既に面白いゲームですが、それだけではなく息の長いゲームとなるよう、ユーザーにゲーム内でトークンを消費させる仕組みや、ユーザーの期待感を煽るコンテンツ制作、様々なユーティリティを付与したトークン設計等、トークンの種類を上手く使い分けて流動性や希少価値を調整するといったトークンエコノミーの設計が非常に興味深いライフフィットネスアプリです。

本記事では、トークンエコノミーの一例として、STEPNの大まかな概要を紹介しましたが、STEPNのWHITEPAPERやLITEPAPERには、STEPNとは何か、トークンの種類/特徴等について詳細に記載されているので気になる方は、公式サイトをご参照ください。

https://stepn.com/

トークンエコノミーの将来性

既に多くの企業や研究所、地方自治体等がトークンエコノミーの開発に取り組んでおり、あらゆるコミュニティに経済圏を生み出す可能性を秘めています。

トークンエコノミーの設計には、流動性やトークンのユーティリティ、ユーザーへの期待値のコントロールが要となります。これらを上手く設計すれば、多くのユーザーを確保することができるでしょう。

 

世界的には日本ほど “ポイント” が日常生活に浸透している国はありません。節約の代表として “ポイ活” という言葉が広がり、皆さんは知らないうちにコミュニティマネジメントの中で生活を送っています。

言い換えれば、日本ほどトークンエコノミーが適合する国はない、とも言えます。

持続的な運営ができるトークンを活用した街づくり、こんな将来が、当たり前のように浸透しているかもしれません。

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