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コラム

Web3.0(ウェブスリー)が注目されている背景とは。

Web3.0(ウェブスリー)という言葉が注目を集めています。Web3.0は、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)を中心としたパラダイムWeb2.0に対する強烈なアンチテーゼです。Web3.0を提唱したイギリスのコンピューター科学者であるギャビン・ウッド氏はPolkadot(ポルカドット)やKusama(クサマ)の創設者として知られています。本記事では、Web3.0が注目されている背景を解説します。

Web3.0とはクリプトのリブランディング

Web3.0の定義については諸説ありますが、暗号資産・ブロックチェーンの世界観を表す「クリプト」という言葉のリブランディングであると考えるといいでしょう。一般的に、暗号資産・ブロックチェーンを投機の対象や一過性のトレンドであると捉える人は多く、クリプトという用語には負のイメージがつきまといます。そこで、クリプトをWeb3.0とリブランディングして、再スタートを図ろうというのが今回のムーブメントの背景です。

Web3.0は次世代のインターネットと期待されていますが、いきなりWeb3.0を理解しようとするのではなく、まずはWeb1.0とWeb2.0のパラダイムを知って、どのような文脈でWeb3.0が生まれてきたのか紐解く必要があります。そのため、次章ではWeb1.0とWeb2.0について取り上げ、なぜこのタイミングでWeb3.0なのか説明していきます。

Web3.0ではGAFAMを中心とするWeb2.0からの脱却を図る

 

 

Web1.0

Web2.0

Web3.0

時期

1990年代半ば〜2000年代半ば

2000年代半ば〜2010年代後半

2020年代前半〜

権限

Read

Read-Write

Read-Write-Own

コンテンツ

一方向(静的)コンテンツ

双方向(動的)コンテンツ

NFT(非代替性トークン)

流通する価値

情報

感情

信頼

メディア

企業・組織

プラットフォーム

ネットワーク

サービス

ホームページ

SNS

メタバース

技術

PC・インターネット

モバイル・クラウド

ブロックチェーン

ガバナンス

分散型

中央集権型

分散自律型

Web1.0とは、WWW(World Wide Web)の誕生により、個人が自由にWebサイトを作り、情報発信ができるようになった時代を指します。時期としては、1990年代半ば〜2000年代半ばにあたります。

当時は、CSSやJavaScriptなどのプログラム言語が発達しておらず、HTMLによる静的なコンテンツが中心で、情報の読み取りのみが可能(一方向)でした。主役となるのは企業・組織で予算をかけてWebサイトを作り、情報発信を行っていました。

Web2.0では、Web1.0の課題である情報伝達の一方向性を解決できるサービスであるSNSが登場しました。これによって、今まで情報を受け取ることしかできなかった個人がTwitterやInstagram、FacebookなどのSNSに投稿することにより、情報を書き込むことが可能になります。これによって、Webは双方向性を持つことになりました。

しかしインターネットがSNSの登場により自由を獲得したかというと、むしろさまざまな制約を生み出すことになります。なぜならSNSをはじめとするプラットフォームを支配する企業はGAFAMを中心とするビッグテックと呼ばれる少数の企業群だからです。個人は情報を生み出す存在でありながらも、それらの情報を独占しているのはビッグテックです。

SNS上の情報は、政治や経済を含む人々の生活に大きな影響を与えます。しかしフェイクニュースやヘイトスピーチの蔓延もあり、利用者の投稿をどこまで検閲するかも課題です。また米大統領選挙で見られたようなSNSの政治利用や、ビッグテックによる新興SNSへの度重なる買収が反トラスト法(独占禁止法)に違反するのではという疑惑などの社会問題も生まれています。

そこで新たに登場したのが分散型Webとも言われるWeb3.0という概念です。後ほど詳しく解説しますが、NFT技術の誕生によりユーザーは自身の情報(データ)を所有することができるようになりました。Web1.0を“Read(読み取り)”の時代だとしたら、Web2.0は“Read-Write(読み取り・書き込み)”、Web3.0は“Read-Write-Own(読み取り・書き込み・所有)”の時代と考えることができるでしょう。

またこちらも後述しますが、Web3.0は次世代のSNSとしてメタバースが主戦場になる可能性があります。これによって、バーチャルファーストという概念が生まれ、生み出される情報もWeb2.0とは比較にならないほど膨大になります。

Web2.0で少数の企業が支配する中央集権型になったインターネットは、Web3.0によって再び分散化し自律的に拡大していく時代がやってこようとしています。

Web3.0で恩恵を受けるのは企業ではなく個人

Web3.0では、自分自身のデータ(個人情報)を自分で管理できるようになります。これまでは自分自身のデータをプラットフォームに提供しても、その対価を受け取ることができませんでしたが、データのマーケットプレイスが生まれることによって、その流れが大きく変わります。

これまでは何らかのプロジェクトが成功してもリターンを受け取れるのは、機関投資家やベンチャーキャピタルが中心でした。しかしWeb3.0の世界では、エコシステムに貢献した人々がトークンを受け取ることによって、プロジェクトが飛躍したときに、今よりも金銭的なリターンを享受しやすくなります。そのため、少数の人々に富が集中するのではなく、社会全体に富が分散していくことが期待できます。

ではWeb3.0の主役となるのは一体どのような人々でしょうか? それはゼロからイチを生み出すクリエイターです。社会には価値を創造する人々と価値を消費する人々の2つのタイプの人々がいますが、Web3.0では前者がより報われるようになります。Web3.0の到来は、クリエイターエコノミーの成熟を予感させます。

Web3.0のトレンド技術であるNFTとメタバース

ここでは、Web3.0を理解する上で避けては通れないNFTとメタバースというふたつのトレンド技術について触れたいと思います。どちらも新しい概念かつ仕組みが複雑なため、敬遠してしまう人が多いかもしれませんが、これからの時代を生き抜く上で両者への理解は必須になります。

今までデジタル上の資産、例えばゲームのアイテムやデジタルアートなど、はコピーアンドペーストにより供給を無限にできるため、金銭的価値を持ちにくい性質がありました。しかしNFTの登場により、デジタル上の資産の供給量を制限することが可能になり、デジタル資産は金銭的価値を持つようになります。

これによって、メタバース上のさまざまなデジタル資産の価値をNFTで担保することにより、メタバース内でPlay-to-Earn(P2E)をすることができるようになります。要するに、リアルの世界で働かなくてもバーチャルな世界で働いて、生活ができるようになるということです。実際に、Axie Infinity(アクシーインフィニティ)などのブロックチェーンゲームで日々の生活費を稼ぐ人々が、発展途上国を中心に次々と誕生しています。

メタバースは、必ずしもブロックチェーン技術を必要としませんが、両者が交叉することにより大きなパラダイムシフトを起こすことができます。メタバースは次世代のSNSであり、そこでお金を稼ぐことができるため、バーチャルネイティブな世代が大人になれば、世の中の働き方や生活習慣は大きく変化することが予想できます。

Web3.0のこれから

ここまでWeb3.0について解説してきましたが、人々の行動はすぐには変化しないので、そのインパクトの大きさが顕在化するためには少なくとも3年〜5年はかかると考えてよいでしょう。また、Web3.0はややバズワードのような雰囲気があるため、一過性のトレンドであると考えるかもしれませんが、ここまでの記事を読めば人々の暮らしを変える本質的なムーブメントであるということが伝わったかと思います。Web3.0の世界に興味を持った方は、NFTやメタバースなどに積極的に触れてみて、世の中の意見ではなく自分がどう思ったかという直感を大切にするとよいでしょう。

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